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『プライマ・フェイシィ -私の声を聞いて-』

OSHI-KATSU

『プライマ・フェイシィ -私の声を聞いて-』演劇ジャーナリスト・伊達なつめさんの一押しステージ情報!

執筆者:伊達なつめ

演劇ジャーナリスト・伊達なつめさんのおすすめ作品をご紹介。今回は、『プライマ・フェイシィ -私の声を聞いて-』をピックアップ。


性被害の当事者となった弁護士の直面した現実とは

 言うまでもないことだけれども、レイプは肉体のみならず人間の尊厳を傷つける、最悪に卑劣な重大犯罪だ。しかもその後、泣き寝入りせず勇気をもって告発する被害者には、壮烈な二次被害が待ち受けている。つい最近も、同じ職場である大阪地検(当時)検事正に性的暴力を受けた現役女性検事が、法的手段により闘い続けるも、ついに退職を余儀なくされるという絶望的な事例が発生。目の前が真っ暗になったままだ。法律の専門家であってさえ、こんな理不尽な目に遭わねばならないって、いったいどういうことなのか。個人、組織、社会、それぞれの単位で非合理的なものが蠢(うごめ)いていて、太刀打ち不能なほど巧妙に行く手を阻むのが現実なのだろう。気分はずんと沈むけれどしかし、打ちひしがれてばかりもいられない。立ちはだかる非合理について、少しずつでも発信される情報を共有し、問題の根っこに近づいてゆきたい。

 性被害を多く扱ってきた弁護士が被害の当事者になった現実を微細に描く『プライマ・フェイシイ』は、この犯罪がいかに誰にも降りかかり得るものであるか。そして被害者が法律のプロであっても、相手を有罪に処することがどれだけ困難かを、法廷を舞台に具体的に例証してゆくひとり芝居だ。

 主人公のテッサは若いエリート弁護士で、前途洋々。ケンブリッジのロースクールで「純然たる真実はなく、あるのは法的な真実のみ」と教えられ、依頼人の味方であるより、法を検証することに重きを置くクールな弁護士である自分を、イケてると思っている。そんなある日、同僚弁護士に不同意で性交されたことから、彼女の人生は激変。周囲との関係も、弁護士としての自分のスタンスも、拠りどころであるはずの法に対する認識も、すべてが根本的に揺らぎ始める。

 作者のスージー・ミラーは弁護士出身の劇作家。ロースクール時代から、なぜレイプの被害者は被害者であるにもかかわらず、法の下でさえ不当かつ残酷な仕打ちを受けなければならないのかを問うこの作品のアイデアをあたためていたといい、勇気をもって戯曲として書き上げる後押しをしてくれたのが#MeToo運動の高まりだったと、戯曲の序に記している。2019年にシドニーで初演された本作は大反響を呼び、ロンドン、ニューヨークでも主要演劇賞を総なめし、現在映画版も公開待ち。日本でもやっと最高のキャスト(三浦透子)と演出(栗山民也)で上演が実現する。世界的な人権運動のうねりが生んだ世界的話題作。親密なライブ空間は、自分のこととして向き合うための最高の場となるはずだ。

『プライマ・フェイシィ -私の声を聞いて-』

シス・カンパニー公演
『プライマ・フェイシィ -私の声を聞いて-』

作=スージー・ミラー 翻訳=徐 賀世子 演出=栗山民也
出演=三浦透子
7月1日(水)~26日(日) ザ・スズナリ ※群馬、福島、茨城、大阪、兵庫公演あり
(問)シス・カンパニー TEL : 03-5423-5906

文=伊達なつめ

※InRed2026年7月号より。情報は雑誌掲載時のものになります。
※画像・イラスト・文章の無断転載はご遠慮ください。
※地震や天候などの影響により、イベント内容の変更、開催の延期や中止も予想されます。詳細はお問い合わせ先にご確認ください。

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この記事を書いた人

演劇ジャーナリスト。演劇、ダンス、ミュージカルなど、国内外のあらゆるパフォーミングアーツを取材し、多数の雑誌・webメディアに寄稿。

X:@NatsumeDate
Website:http://stagecalendarcv19.com

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