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【8月・9月公開映画】放送作家・町山広美が厳選!夏休み観たい映画2選
執筆者:InRed編集部
InRedの長寿映画連載「レッド・ムービー、カモーン」。放送作家の町山広美さんが、独自の視点で最新映画をレビュー。今回は、8月・9月に公開される注目作をご紹介します。
「事実」の使いかた、「体験」の作りかた
資源に恵まれない国。その自認がある国から海の向こうを見れば、恵まれたがゆえ「資源の呪い」に苦しむ国々がある。資源の価値が時代によって移り変わっても、強国が資源を狙って謀略を仕掛ける構図は繰り返される。今もまさにその真っ最中だ。
ドキュメンタリー『叛逆のサウンドトラック』のはじまりは、国連の安保理事会へ抗議の声をあげ突入するジャズミュージシャンや女性たち。1961年の出来事だ。さらにはその議場で机をリズミカルに叩き、当時のソ連の最高指導者フルシチョフは言う、「植民地制度に死を」。一方、トランペットの天才ルイ・アームストロングが、米国国務省の音楽親善大使としてアフリカで歓迎される。「アメリカの秘密兵器はブルーノート」という記事の見出しが踊り、本作のタイトルはジャズのレーベル、ブルーノートの名盤を模したタイポグラフィでかっこよく刻まれる。直訳すれば「クーデターのサウンドトラック」だ。
と書いてみても、これは冒頭に示される要素のごく一部。いきなりの膨大な情報量に怯むが、それでもリズムに乗せられ、タイトル通り次々と繋がれる音楽に頭を揺らされ、映像の移り変わりを眺めるのがなんとも心地いい。そうするうち、「構造」が立体的に見えてくる。こんな映画体験は前例がない。
真ん中にあるのは、コンゴの独立と混乱だ。ベルギーの植民地だったが、1950年代半ば、アフリカに沸く独立の気運がここにも芽吹く。アフリカ統一も見据えたその動きを抑え込もうと、他国の謀略が渦を巻き……。
ヨハン・グリモンプレ監督はベルギー人だが、「自国の黒歴史」を告発するだけに収める気は毛頭ない。
コンゴ南部ではウランが産出される。米国は独占契約を結んで入手、日本に落とす原爆を作ったし、続く米ソ冷戦においてもウランは重要この上ない戦力の元だ。一方、米国の国内ではアフリカ系の人々の平等な権利、差別の解消を求める公民権運動が起きていた。その運動と深く結びついているのがジャズであり、アフリカ系の人気ミュージシャンたちだ。
公民権運動を鼓舞する音楽、そして国際協力のための機関を標榜する国連を、都合よく使って、盗んで、コンゴの独立を形骸化させる企みはどう遂行されたのか。しかしこれは米国を悪魔化する映画とも、また違う。
あの時、何が起きていたのかを、異なる人物や経路から、繰り返し語る。変奏される反復を追ううち、今まさに起きてることにも連想が及ぶ。強国の傀儡(かいらい)政権が作られ、資源が奪われ、人々が分断され、現地の平穏が盗まれる。似た顛末が今も繰り返されている。「強国」を「男性」に置き換えることもできるだろう。
反復で高まっていく映像と音楽と意味の膨大な集積であるこの映画を身体に貫通させた後、現在が現実がどう見えてくるか。これは、何度も繰り返したくなる体験だ。
この記事を書いた人
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