東京サンシャインボーイズ 復活公演『蒙古が襲来』演劇ジャーナリスト・伊達なつめさんの一押しステージ情報!

執筆者:伊達なつめ

『蒙古が襲来』

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演劇ジャーナリスト・伊達なつめさんのおすすめ作品をご紹介。今回は、東京サンシャインボーイズ 復活公演『蒙古が襲来』をピックアップ。


まさに瓢箪から駒! 30年前の予告が現実に

 30年後の自分がどうしているかなんて、30代の頃は考えもつかなかった。三谷幸喜も、きっとそうだったのでは。当時人気絶頂だった主する劇団東京サンシャインボーイズを解散するにあたり、そのショッキングな英断を和らげるためか、「30年の充電」と発表したのは1994年のことだった。想像もつかない長い期間で、かつまだ生きている可能性が高く、現実味もないことはない絶妙な設定。コメディ作家/劇団らしく、(実質的な最終)公演時のパンフレットの裏表紙には、いつも通り次回公演の予告が、こんなコピーとともに掲載されていた。

「我慢の限界、爆発寸前、もうじっとしていられない 東京サンシャインボーイズ改め、老境サンシャインボーイズ『リア玉』」

 シェイクスピア作品のパロディっぽいタイトルとイラストの下には、2024年9月6日(金)~8日(日)という公演期間と実在の会場・料金・スタッフ連名。キャスト14 名には”相島一之(62歳)”などとわざわざ30年後の年齢を表示し、さらに同年12月の次々回公演『ブロードウェイの生活(2024年版)』の告知まで入っていた。「さすが退き際まで笑いで締める三谷幸喜&サンシャインボーイズ」と唸ったのと同時に、「瓢箪から駒で、けっこう実現したりして」という夢想も抱かせてくれた。以後、後者の思いが膨張。三谷と劇団員の活躍ぶりに接するにつけ、この最終公演パンフを取り出しては裏表紙を確認して「あと〇年か」と心待ちにするようになっていた。

 というわけで、昨夏「東京サンシャインボーイズ復活!」と報道された際にも驚きはなく、「はいはい、ちょっと遅れましたね」くらいに受け止めていたのだけれど、実際に多くが60代になったキャストが集合したビジュアルを見ると、さすがにグッと胸に迫るものがある。劇団名は「老境」ではなく「東京」のまま、作品は『リア玉』ではなく『蒙古が襲来』という、鎌倉時代に元(蒙古)軍の襲来を受けた漁村を舞台にした話に変わっているものの、ほとんどのキャストは健在で、2002年に亡くなった伊藤俊人も何らかの形で登場するというから、見事な予告の実現化だ。さらに150席ほどの劇場で3日間の上演のはずが、東京だけでも約4倍のキャパシティで25回+全国9都市での上演、かつチケット超入手困難という、実は眩いほどの発展ぶりなのだ。

 当然、内輪受けのノスタルジーなど微塵もない、優れたクオリティのコメディが展開するはずなので、こんなオールドファンの繰り言は無視して、どうか存分に楽しんでください。

『蒙古が襲来』

作・演出=三谷幸喜
出演=相島一之、阿南健治、伊藤俊人、小原雅人、梶原 善、甲本雅裕、小林 隆、近藤芳正、谷川清美、西田 薫、西村まさ彦、野仲イサオ、宮地雅子、吉田 羊
2月9日(日)~3月2日(日) PARCO劇場
※岡山、京都、長
野、宮城、北海道、大阪、愛知、福岡、沖縄公演あり
(問)サンライズプロモーション東京  TEL:0570-00-3337

文=伊達なつめ

※InRed2025年3月号より。情報は雑誌掲載時のものになります。
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この記事を書いた人

演劇ジャーナリスト。演劇、ダンス、ミュージカルなど、国内外のあらゆるパフォーミングアーツを取材し、多数の雑誌・webメディアに寄稿。

X:@NatsumeDate
Website:http://stagecalendarcv19.com

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