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【5月・6月公開映画】放送作家・町山広美が厳選!注目の【映画2選】

執筆者:InRed編集部

InRedの長寿映画連載「レッド・ムービー、カモーン」。放送作家の町山広美さんが、独自の視点で最新映画をレビュー。今回は、5月・6月に公開される注目作をご紹介します。

偶然と必然を結ぶ細い橋
イランからスペインから

みんな同じ。「世界のカフェベスト100」みたいな記事を眺めると、都会で穏やかな憩いを提供する空間はどこの国でも似たような素敵さが保たれ、もう戦争なんてできなくなるんじゃないかと甘い予断に誘われる。
  
 現実は、戦争が相次ぎ、分断と対立は深まるばかり。その現状はしかし、同質化に濁った場所で眠っていた者の目を覚まさせもする。世界はバラバラ。みんな違う。枠組みごとぐらぐら揺れる現在を見据えようとするなら、映画の手を借りることは有効だ。

 『シンプル・アクシデント/偶然』は、イランの映画。準備されない、復讐のチャンスが偶然ある男に舞い込む。だが手にかけたまさにその時、「本当にこいつが俺を苦しめた奴だっけ?」という不安が首をもたげたら、さあどうなるでしょうという物語だ。
 
 先が読めないが故に持続する興奮、思惑がハズれ不意をつかれて湧く笑い。サスペンスとコメディが一体化するのは必然なのだと証明するかのごとき、巧みな脚本。独自の語り口。物語に連れ回されるのが楽しい。
 
 主人公ワヒドは、かつて反政府活動をしたと見なされて不当に投獄され、人生を破壊された男。かつて自分を繰り返し拷問した看守に、遭遇してしまう。あの声、引きずる足音、間違いない。復讐するしかない。
 
 この映画は、反政府活動を理由に投獄されたジャファル・パナヒ監督自身の体験が起点にある。囚人にはワヒドのように、賃上げを訴えただけで逮捕された人もいたという。国民を監視し、自由を制限、従わない者を徹底的に抑圧する強権体制にあって、釈放されても苦しみは続く。そうした苦しみと怒りにどう対峙するのか。復讐に我が身を焼いてよいものか。
 
 拷問中、囚人は目隠しされ、看守
の個人情報は守られていた。ワヒドは、捕まえた相手が憎い看守かどうか、確信が持てない。同様に拷問を受けた人々に協力を求めるうち、復讐キャラバンの人数は増えていく。それぞれの信念や思惑のズレが笑いを誘う、ドタバタ道中。本人かどうかわからない復讐相手を連れ回す不条理は、復讐の起点である逮捕の不条理を裏打ちする。たとえ憎い看守を殺せたところで、彼が従い、手先となった権力側には少しの傷もつけられないことの虚しさ。すべてを煮詰めて問いかけるラストシーンの緊張感は凄まじい。

 イランをアメリカとイスラエルが、核兵器を作って攻撃を準備しているという理由で攻撃、女子小学校への爆撃を「誤爆」と主張するタイミングでの、日本公開となった。偶然か必然か、地続きの出来事としてこの映画を見ることができるはずだ。

この記事を書いた人

「35歳、ヘルシーに!美しく! 」をテーマにしている雑誌『InRed(インレッド)』編集部。 “大人のお洒落カジュアル”を軸に、ファッションや美容はもちろん、ライフスタイル全般を網羅。公式ウェブサイト『InRed web』ではライフステージの変化の多い世代ならではの、健康、お金・仕事、推し活に関する情報を発信。お洒落で楽しい毎日に役に立つヒントをお届けしています。

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