【多部未華子】インタビュー「作品に入っていない時は、毎日子どもを中心にして生きているので、大変さや苦労も痛いほどわかります」
執筆者:長嶺葉月
InRed5月号の表紙へ登場してくれた多部未華子さんは、現在、主演ドラマ「対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜」に出演中。専業主婦の村上詩穂を演じているこのドラマについてお伺いします。
PROFILE
たべ・みかこ/1989年1月25日生まれ、東京都出身。2002年にデビュー。今までにブルーリボン賞新人賞、エランドール賞新人賞、読売演劇大賞優秀女優賞などを受賞。近年の出演作にドラマ「スロウトレイン」、映画『流浪の月』などがある
自分なりに頑張ればいい、そう背中を押してくれるドラマに
「自分が育ってきた家庭や両親に対して複雑な経験、思いをしてきた中で、詩穂は自分で家族を作っていこうと思った時に専業主婦の道を選んだ人。なりゆきではなく強く芯を持った上で、自分の選択を肯定しながら前に進んでいる。詩穂以外にも、江口のりこさんが演じるほぼワンオペ状態で育児と仕事の両立に奮闘する長野礼子、ディーン・フジオカさんが演じる育休中のエリート官僚・中谷達也など、いろんな登場人物のいろんな人生が描かれていて、それぞれが違った生き方をする中でも、歩み寄って、補い合って、支え合うような、温かなドラマになっています。私自身も、子育てをしながら働いている立場なので、見えない未来に対して不安を抱くことだったり、子育てで悩むこともたくさんあるので、どの登場人物にもとてつもなく共感できるんですよね。江口さんが演じる礼子は二人の子どもを育てる働くママですが、その姿は私自身が仕事が忙しい時と重なります。髪を振り乱して、自分の外見なんてまったく気にすることができないほどバタバタする日々です。一方で、作品に入っていない時は、毎日子どもを中心にして生きているので、その大変さや苦労も痛いほどわかります。台本を読むと、さまざまな登場人物の立場の苦労や辛さ、閉塞感みたいなものがグッと胸に迫りながらも、『明日からも自分なりに頑張ればいいか』と心を上向きにしてくれます」
自分で決めて、選んだ道だとしても心が揺らぐ時もある! そんな詩穂の葛藤は誰もが抱えているものだと思うんです。
「ふと、自分は本当にこれでよかったのかな?このままでいいのだろうか?と思い悩むのは当然で、生き方に答えなんてなくて、環境も違えば、価値観や経済状況、将来の見据え方もどうしたって人それぞれだし、比べてもしょうがないですし、答えなんてわからないまま駆け回って生きていかなきゃいけない。それぞれの立場や目線で描かれている点でも、現代にフィットしたドラマだと思いました。詩穂は自分はこれでいいと、ちゃんと納得させながら生きている人。私自身も、子育てに関しては、“わからないことばかりで当然”というのを前提にやっています。そのおかげで深刻に思い悩むことなく今日までこられたと思っています。仕事の環境でも、幸いなことに子育て中のスタッフさんもたくさんいて『なんとかなるよ』と励まされてばかり。迷惑をかけているかも? 期待に応えられているのか? 葛藤は常にありますけどね」
ドラマ「対岸の家事~これが、私の生きる道!~」
“家事”という終わりなき仕事をテーマにした新たなヒューマンドラマ。出演:多部未華子、江口のりこ、ディーン・フジオカ 他。
毎週火曜夜10時〜TBS系にて放送中。
Model=Mikako Tabe Photograph=Yasuhisa Kikuch〈i Vale.〉
Styling=Makiko Iwata Hair & Make-up=Ayano Iwane
Interview & Text=Hazuki Nagamine
※InRed2025年4月号より。情報は雑誌掲載時のものになります。
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