【開催中!10月の必見アート】『空の発見』『丸沼芸術の森所蔵アンドリュー・ワイエス展 追憶のオルソン・ハウス』見どころは?
執筆者:林 綾野
キュレーター・アートライターとして展覧会企画や、美術書の執筆を手がける林綾野さんが紹介するアート情報。今回は、東京・渋谷区立松濤美術館で開催中の『空の発見』、京都・アサヒグループ大山崎山荘美術館で開催中の『丸沼芸術の森所蔵アンドリュー・ワイエス展 追憶のオルソン・ハウス』をピックアップします。
美しい青空から心の内側まで空に込められた思いを追う
目に見えるけれど決して触れることのできない「空」。時間、天候、季節によって常に異なる様相を見せる「空」。渋谷区立松濤美術館では、そんな空が美術作品においてどのように表現されてきたのか、その変遷をひもとく展覧会『空の発見』が開催されている。
江戸の浮世絵師、葛飾北斎による雄大な富士山と雲が浮かぶ空を描いた《富嶽三十六景 山下白雨》、大正時代に活躍した洋画家、岸田劉生が描く青々とした空が美しい《窓外夏景》など、空を蒼天として描いた作品たち。さらに萬鉄五郎の《雲のある自画像》のように空や雲に人間の心理状態を託す絵も並ぶ。中でも香月泰男の《青の太陽》は印象深い。戦中、出征先で苦しみの中、「いっそ蟻になりたい」という思いにかられ、蟻の巣穴から見上げる空を思い浮かべた記憶から描かれた名作だ。
展覧会では17世紀の絵画から写真、現代美術に至る多様な作品を「空」という視点から楽しむことができる。
京都、アサヒグループ大山崎山荘美術館ではアンドリュー・ワイエスの展覧会が開催されている。アメリカの国民的画家であるワイエス。代表作《クリスティーナの世界》や《オルソンの家の秋》など、水彩画や素描など約60点の作品が並ぶ。美しいアメリカの自然を繊細に描き、そこで力強く生きる人々を真摯に捉えたワイエスの眼差しと画力を存分に味わえる貴重な機会だ。
アーティストの瞳に映ったもの、心で感じたものが表された世界。作品から私たちは何を受け取るだろうか?
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