OSHI-KATSU
温泉ライター永井千晴さんが影響を受けた2冊の本「30代の今だからこそ憧れる、女性作家が描く女性たち」書き下ろしコラム
執筆者:InRed編集部
InRed世代に読んでほしい書籍をご紹介!今回は、『温泉オタク会社員が教える 仕事を頑張る人の温泉術』(朝日新聞出版)を発売した、温泉ライターの永井千晴さん推薦の2冊です。
30代の今だからこそ憧れる
女性作家が描く、女性たち
10代の時、女性作家の本が読めませんでした。おんなという、大きな主語の中に取り込まれ、共感するのが恥ずかしかった。そして、女性作家が描く女性性と対峙するのが怖かったのです。そんな多感な時期を過ぎ、20歳ぐらいからようやく女性作家の本を手に取れるようになりました。たどり着いたのは、角田光代さんや田辺聖子さん。当時私は旅が好きな大学生で、国内外いろいろな場所へ巡っていたころ。角田光代さんのエッセイ『恋をしよう。夢をみよう。旅にでよう。』は、角田さんが旅の出会いや日常のささいな出来事・気づきを綴ったものです。10代では読めなかった、おんなの視点のオンパレード。旅行という共通の趣味をもつ年上のお姉ちゃんができた気分になり、自分の中にあるおんなの輪郭に気づく一冊でした。
田辺聖子さんの『感傷旅行』は、短編のオムニバスで、表題の作品も最高だけれど、最初の「恋の棺」が一番好き。離婚したばかりの29歳の主人公・ウネが、仕事の疲れを癒やすために六甲山のホテルに滞在し、10個年下の甥を可愛がる物語。あまりに大人すぎて、私はいつかウネになれるだろうかと思い馳せたものです。30代のいまは、存分におんなであることを受け入れ、女性作家が描く女性たちに憧れを抱いています。
文=永井千晴
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