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『NIJNTJE』(初版)1955年 © Mercis bv

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【9月に行くべきアート展】『誕生70周年記念 ミッフィー展』『長新太展』キュレーター・林綾野さんが見どころを紹介

執筆者:林 綾野

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キュレーター・アートライターとして展覧会企画や、美術書の執筆を手がける林綾野さんが紹介するアート情報。今回は、横浜・そごう美術館で開催の『誕生70周年記念 ミッフィー展』、福井県ふるさと文学館で開催の『自由いっぱい!奇想天外!長新太 ナンセンス・ワールド』をご紹介します。


絵が表し、言葉が伝えるもの
しっかりと紡がれた絵本の世界

 1955年、オランダで『NIJNTJE』という絵本が出版される。作者はグラフィックデザイナーのディック・ブルーナ。日本では1964年『ちいさなうさこちゃん』というタイトルで翻訳版が出版された。主人公の小さなうさぎの女の子「ナインチェ」は、日本では「うさこちゃん」と翻訳され、その後、英語訳での「ミッフィー」という名でも広く親しまれるようになっていく。

 横浜のそごう美術館ではミッフィーの誕生70周年を記念する展覧会が開催される。ミッフィーシリーズ全32作の原画やスケッチなど200点以上の作品や資料が一堂に介する。ミッフィーの絵本がどうやって生まれ、変遷していったのか。作品に込められた想いを紐解きながら、作者であるブルーナが丁寧に描いた貴重な原画を見つめたい。

 福井県ふるさと文学館では『長新太展』が開催中。『ゴムあたまポンたろう』『キャベツくん』など人気絵本で知られる長新太。没後20年を記念する本展では、初期の漫画から代表的な絵本の原画、画材や手帖、愛用の品々など約350点におよぶ作品、資料が並ぶ。

 長の真骨頂は「ナンセンス」。意味にとらわれず、常識にも形式に縛られない奇想天外な物語と絵の世界は私たちのこり固まった心を自由に解放してくれる。何層にも絵の具を塗り重ねた重厚感のある絵も見どころ。印刷物では味わえない原画の味わいを堪能したい。

 子どもたち、そして大人にとっても心に染みる絵本の世界により深く踏み込んでみてはいかがだろうか。

この記事を書いた人

キュレイター、アートライター。展覧会企画、美術書の執筆を手がける。画家の創作への想いや食の嗜好などを研究、紹介し、美術鑑賞をより身近なのとして提案。近年手がけた展覧会「おいしい浮世絵展」「堀内誠一 絵の世界展」「柚木沙弥郎life•LIFE展」「谷川俊太郎絵本百貨展」など。主な著作は『フェルメールの食卓』『ゴッホ 旅とレシピ』、『ぼくはクロード・モネ』(講談社)、『浮世絵に見る江戸の食卓』(美術出版社)など。

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