【7~8月に行きたいアート】『ルイジ・ギッリ 終わらない風景』『藤田嗣治 絵画と写真』キュレーター・林綾野さんが見どころを紹介
執筆者:林 綾野
キュレーター・アートライターとして展覧会企画や、美術書の執筆を手がける林綾野さんが紹介するアート情報。今回は、東京都写真美術館で開催の『総合開館30周年記念 ルイジ・ギッリ 終わらない風景』、東京ステーションギャラリーで開催の『藤田嗣治 絵画と写真』をご紹介します。
「在」と「不在」をめぐる喜びと思索を刺激する写真
白い壁を背景にした机の上にピッチャーや花器、石やドライフラワーなどが佇む。明るい光に満ちた室内は静かで、まるで時が止まっているかのよう。美しく、静謐さを湛えるこの写真を撮ったのは写真家、ルイジ・ギッリ。写されているのは20世紀、イタリアで活躍した画家、ジョルジョ・モランディ亡き後のアトリエだ。
東京都写真美術館では、1943年、イタリアに生まれた写真家ギッリの展覧会が開催されている。本展では〈ジョルジョ・モランディのアトリエ〉シリーズや、イタリアの風景、自宅の室内、美術品、看板やポスターなどを捉えたギッリの初期から晩年に至る約130点の写真作品を紹介。アジア初のギッリの美術館個展となる。欧米での個展開催やドキュメンタリー映画『I n f inito(無限)』の発表で世界的にも注目が高まるギッリの作品を見られる貴重な機会だ。
東京ステーションギャラリーでは、『藤田嗣治 絵画と写真』展が開催中。エコール・ド・パリを代表する画家、藤田嗣治。1886年、東京に生まれ、主にフランスで活躍した藤田は絵を描く傍ら、多くの写真も残した。おかっぱ頭に丸メガネといったいでたちで写真に写る藤田は、自らをどう見せるかというセルフブランディングの意識を強く持っていた。本展では藤田の作品、そして写真から芸術家としての在りようを新たな角度から見つめる。
現実の断片、撮影者、被写体の意図。写真の語るものを真摯に見つめたい。
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