【5月公開映画】放送作家・町山広美の映画レビュー『サブスタンス』、『クィア』
執筆者:InRed編集部
『クィア/QUEER』の主人公も老いを感じている。破壊者とも要約される作家ウィリアム・S・バロウズの自伝的小説を、ルカ・グァダニーノ監督が、設定を原作通りの50年代にしながら、80年代以降のヒット曲をあてる荒技で我田引水。『君の名前で僕を呼んで』と背中合わせとも言える、監督のオレ味強めなロマンスに仕立てた。
人生の残り時間を酒と薬で終わらせたかった中年男が、美しい青年に一目惚れし、翻弄され醜態を晒す。「クィア」は当時、嘲笑の言葉だった。その言葉を拒みつつ自分と身体を重ねる青年に、主人公は若き日の自身を見ているかのようだ。彼に拒絶されれば自分を肯定せしめるものがついに尽きると知るからこそ、あえて求める。
自分で深めた孤独を抱きしめる姿は、愚かであるがゆえに美しい。
『サブスタンス』
24年 イギリス・フランス 142分 R-15 監督・脚本:コラリー・ファルジャ 出演:デミ・ムーア、マーガレット・クアリー、デニス・クエイドほか 5/16(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国順次公開
©2024 UNIVERSAL STUDIOS
『クィア/QUEER』
24年 イタリア・アメリカ 137分 R15+ 監督:ルカ・グァダニーノ 出演:ダニエル・クレイグ、ドリュー・スターキー、ジェイソン・シュワルツマンほか 5/9(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開
© 2024 The Apartment S.r.l., FremantleMedia North America, Inc., Frenesy Film Company S.r.l.
© Yannis Drakoulidis
おすすめ記事
- 1
- 2
文=町山広美
放送作家。担当番組に「有吉ゼミ」「マツコの知らない世界」など。
イラスト=小迎裕美子
※InRed2025年6月号より。情報は雑誌掲載時のものになります。
※画像・イラスト・文章の無断転載はご遠慮ください。
KEYWORD
この記事を書いた人
「35歳、ヘルシーに!美しく! 」をテーマにしている雑誌『InRed(インレッド)』編集部。 “大人のお洒落カジュアル”を軸に、ファッションや美容はもちろん、ライフスタイル全般を網羅。公式ウェブサイト『InRed web』ではライフステージの変化の多い世代ならではの、健康、お金・仕事、推し活に関する情報を発信。お洒落で楽しい毎日に役に立つヒントをお届けしています。
X:@InRed_tkj
Instagram:@inrededitor