3月最新アート情報【安野光雅 旅と空想の風景】【特別展 桜 さくら SAKURA 2025】キュレーター・林綾野さんが見どころを紹介
執筆者:林 綾野
キュレーター・アートライターとして展覧会企画や、美術書の執筆を手がける林綾野さんが紹介するアート情報。今回は、京都・大丸ミュージアムで開催中の『安野光雅 旅と空想の風景』、東京・山種美術館で開催中の特別展『桜 さくら SAKURA 2025―美術館でお花見!―』をピックアップします。
緑豊かな自然、美しい桜
春の訪れと心なごむ風景の世界
安野光雅は1926年、島根県津和野町に生まれた。画家、絵本作家、装丁家、デザイナー、著述家として幅広い分野で活躍し、2020年、94歳の生涯を閉じた。大丸ミュージアム京都では安野が描いた代表的なテーマの一つである「風景」に着目する『安野光雅 旅と空想の風景』展が開催される。
まずは安野がヨーロッパのさまざまな国や日本各地を旅して描いた風景画の数々が並ぶ。そして展覧会の見どころの一つは、世界的にも高い評価を受ける『旅の絵本Ⅲ』〈イギリス編〉の全場面展示。緑豊かな自然、美しい街の描写、そこで生きる人たちの姿が優しく描かれる風景の世界を楽しめる。さらに「懐かしの風景」として、安野の子ども時代を描いた『ついきのうのこと』、切り絵の表現が際立つ『昔咄きりがみ桃太郎』。ふしぎいっぱいな『もりのえほん』や、デザイナーとして取り組んだ装丁やその原画など約120点の作品から多彩な仕事を見つめる。
東京、山種美術館では『桜 さくら SAKURA 2025』展が開催される。春の訪れに合わせ、奥村土牛や速水御舟、加山又造など、名だたる日本画家による桜を描いた名品がずらりと並ぶ。満開の桜、淡い月明かりに照らされる夜桜など、同じ桜でもその表現方法もさまざま。画家たちによる創意あふれる桜の世界で春を謳歌したい。
描き手が思いを込めて表した風景。美しい色彩や細やかな描写を見つめながら、そこに潜む暖かなまなざしや春を愛する気持ちまでも感じてみたい。
この記事を書いた人