ミュージカル『SIX』演劇ジャーナリスト・伊達なつめさんの一押しステージ情報!
執筆者:伊達なつめ
演劇ジャーナリスト・伊達なつめさんのおすすめ作品をご紹介。今回は、ミュージカル『SIX』をピックアップ。
まるでライブコンサート! 6人の元妻が人生を熱唱
むかしロンドンの観光みやげに“ヘンリー八世と6人の妻たちチョコレート”っていうのがあったなと思ってググってみたら、今も同名のミントチョコレートが健在の様子。恰幅のいい髭面が印象的な16世紀前半のイングランド王ヘンリー八世の肖像画を中央に、左右に3人ずつ細面の妻たちを配したチョコレート計7個の詰め合わせだ。つまり、英国ではそれくらいおなじみな王様と6人の妻なのだ。
男子継承にこだわり、男の子が生まれるまで6回結婚したヘンリー八世。1人目の妃キャサリン・オブ・アラゴンとは、女の子しか生まれなかったため離婚。ほぼ略奪婚だった2人目のアン・ブーリンは、流産の後、姦通などの罪に問われ斬首刑に。その処刑の翌日に婚約した3人目のジェーン・シーモアは、待望の男子を産んだ直後に亡くなり、4人目のアナ・オブ・クレーヴスは、王が結婚前に見た肖像画と似ていないという理由で、即離婚。5人目のキャサリン・ハワードは、結婚前の恋人との関係を続けていた姦通罪で斬首。6人目のキャサリン・パーと結婚した4年後にヘンリー八世が崩御して、記録はストップした。やれやれ、いったい女性を何だと思っているのか、ツッコミどころ満載の王様ではある。
2017年、当時ケンブリッジ大学の学生だったトビー・マーロウとルーシー・モスも、きっとツッコミたくなったのだろう。6人を「誰がいちばん悲惨か」を競い合ってリード・ヴォーカルを決めるガール・グループの女性たちという設定にし、ノリノリのミュージカルに仕立て上げた。各自に現代ポップス界のディーヴァのイメージを重ねていて、1人目のキャサリン・オブ・アラゴンはビヨンセやジェニファー・ロペス、2人目のアン・ブーリンはリリー・アレンやマイリー・サイラス、3人目のジェーン・シーモアはアデルやシーア、4人目のアナ・オブ・クレーヴスはニッキー・ミナージュやリアーナ、5人目のキャサリン・ハワードはアリアナ・グランデやブリトニー・スピアーズ、6人目のキャサリン・パーはアリシア・キーズやエミリー・サンデー、という具合い。1人ずつパワフルに自己主張しながら歌い上げることで、500年の時を経て、妃たちの魂はやっと解放される。同時に、息苦しい思いで日々を送る現代の女性たちへのエンパワーメントにもなっているので、元気が出ること請け合いだ。
ロンドンやブロードウェイで現在も大ヒット中の『SIX』。日本では来日キャスト版と日本キャスト版が続けて上演されるというからヒートアップ必至。ライブコンサートに出かけるつもりで、思いっきり発散しよう!
ミュージカル『SIX』来日版
原作:トビー・マーロウ & ルーシー・モス 演出:ルーシー・モス & ジェイミー・アーミテージ
出演=アラゴン:ビリー・カー、ブーリン:イナ・トレスヴァレス、シーモア:リバティ・ストッター、クレーヴス:ハンナ・ヴィクトリア、ハワード:リジー・エメリー、パー:エロイーズ・ロード
2025年1月8月(水)~26日(日) EXシアター六本木
ミュージカル『SIX』日本キャスト版
翻訳・訳詞=土器屋利行
出演=アラゴン:鈴木瑛美子・ソニン(東京のみ)、ブーリン:田村芽実(東京・愛知のみ)・皆本麻帆、シーモア:原田真絢・遥海、クレーヴス:エリアンナ・菅谷真理恵、ハワード:鈴木愛理・豊原江理佳、パー:和希そら・斎藤瑠希
2025年1月31月(金)~2月21日(金) EXシアター六本木 ※愛知、大阪公演あり
(問)梅田芸術劇場 TEL:0570-077-039
文=伊達なつめ
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この記事を書いた人
演劇ジャーナリスト。演劇、ダンス、ミュージカルなど、国内外のあらゆるパフォーミングアーツを取材し、多数の雑誌・webメディアに寄稿。
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