演劇ジャーナリスト・伊達なつめさんの一押しステージ情報【4~5月公演作品】
InRed本誌のステージ連載を担当する、演劇ジャーナリスト・伊達なつめさんのおすすめ作品をご紹介。今回は、『夜叉ヶ池』、『エンジェルス・イン・アメリカ』、『シェイクスピア・ダブルビル』の3本をピックアップ!
伊達なつめ
演劇ジャーナリスト。演劇、ダンス、ミュージカルなど、国内外のあらゆるパフォーミングアーツを取材し、多数の雑誌・webメディアに寄稿。世界ステージ・カレンダーwithコロナ http://stagecalendarcv19.com
勝地涼が泉鏡花の幽玄ファンタジーに挑む
『夜叉ヶ池』
福井と岐阜の県境に実在する、竜神伝説で有名な夜叉ヶ池。よくある民話も、人間と魔物が邂逅し共存する独特の時空間を描く泉鏡花の手になると、恐ろしさも美しさも禍々しさも異次元の、深遠な物語になる。演出の森新太郎が「紫電清霜」(紫電は鋭い眼光、清霜は白霜のように引き締まったもののたとえだそう)と讃える勝地涼がその詩的世界へ誘う。森山開次のファンタジックな振り付けも楽しみ。
作=泉 鏡花 演出=森 新太郎 振付=森山開次
出演=勝地 涼、入野自由、瀧内公美、那須 凜、山本 亨、伊達 暁、森田甘路、澄人、田中穂先、佐川和正、佐藤 誓 他
5月2日(火)~23日(火) PARCO劇場
(問)パルコステージ TEL 03-3477-5858
LGBTQ+への偏見や差別について問いかける
『エンジェルス・イン・アメリカ』
首相秘書官が同性愛者について「見るのも嫌だ」と発言したことを耳にした時、本作の主要人物のひとり、やり手弁護士ロイ・コーンのことを思い出した。ゲイを毛嫌いした反共産主義者にして実は自分もゲイだったという、曰く付きの複雑な人物だ。エイズが死の病だった時代のヒリヒリするほど切実な、大河ドラマ的スケールのゲイ・ファンタジー。これを今日本で上演する意味をかみ締めたい。
作=トニー・クシュナー 翻訳=小田島創志 演出=上村聡史
出演=浅野雅博、岩永達也、長村航希、坂本慶介、鈴木 杏、那須佐代子、水 夏希、山西 惇
4月18日(火)~5月28日(日) 新国立劇場 小劇場
(問)新国立劇場ボックスオフィス TEL 03-5352-9999
名作戯曲の言葉や世界観をバレエで堪能
『シェイクスピア・ダブルビル』
シェイクスピアの作品が魅力的なことは百も承知。ただあの美辞麗句だらけのせりふの洪水は何とかならないか―と身も蓋もないことを思ってしまう者にとって、優れた振付家ほどありがたいものはない。彼らは言葉を巧みに身体化し、言外の意味や世界観までをも表現してみせるのだから。達人アシュトンの名解釈『夏の夜の夢』と世界初演となるウィル・タケットの『マクベス』を一気見!
『マクベス』 振付=ウィル・タケット 音楽=ジェラルディン・ミュシャ 編曲=マーティン・イェーツ
『夏の夜の夢』 振付=フレデリック・アシュトン 音楽=フェリックス・メンデルスゾーン
指揮=マーティン・イェーツ 管弦楽=東京フィルハーモニー交響楽団
出演=新国立劇場バレエ団
4月29日(土・祝)~5月6日(土) 新国立劇場 オペラパレス
(問)新国立劇場ボックスオフィス TEL 03-5352-9999
文=伊達なつめ
※InRed2023年5月号より。情報は雑誌掲載時のものになります。
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